知っておきたい精神疾患のアレコレ

「なんだか最近、やる気が出ない」「漠然とした不安が続く」「夜眠れない日が続いている」…。

もし、あなたがそんな心の不調を感じているなら、それはもしかしたら、なんらかの精神疾患のサインかもしれません。

しかし、「精神疾患」と聞くと、どこか遠い世界の話のように感じたり、「まさか自分が」と思ってしまったりすることもあるかもしれませんね。でも、精神疾患は決して特別なものではなく、誰もがなり得る身近な病気です。そして、その症状やタイプも多岐にわたります。

この記事では、主な精神疾患の病名とその特徴的な症状を分かりやすく解説します。ご自身の状態や、身近な方の変化を理解するきっかけになれば幸いです。

1. 精神疾患とは?「心の病気」の全体像

精神疾患とは、脳の機能や心の状態に影響が及ぶことで、考え方、感情、行動などに不調が現れる病気の総称です。「心の病気」「メンタルヘルス疾患」とも呼ばれ、精神科心療内科で専門的な診断と治療が行われます。

「精神病」という言葉を耳にすることもあるかもしれませんが、これは一部の重い精神疾患を指すことが多く、精神疾患全体をカバーする言葉ではありません。大切なのは、心の不調を感じたら、ひとりで抱え込まず専門機関に相談することです。

2. あなたの「もしかして?」を解消する主な精神疾患の病名と症状

ここでは、多くの人が経験し得る、あるいはよく耳にする精神疾患の病名と、それぞれの代表的な症状をご紹介します。

気分に大きな波があるなら:うつ病・双極性障害(気分障害)

  • うつ病
    • 症状: 理由もなく気分が落ち込む、何にも興味が持てない、食欲不振、不眠、強い倦怠感、集中力の低下、死について考える、など。朝に症状が重い**「非定型うつ病」や、身体症状が強く出る「仮面うつ病」**といったタイプもあります。仕事に行けない、家事ができないなど、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。
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  • 双極性障害(躁うつ病)
    • 症状: うつ状態に加え、気分が高揚し活動的になる**「躁状態」**を繰り返します。躁状態では、ほとんど眠らずに動き回ったり、衝動的な買い物をしてしまったり、攻撃的になることもあります。

強い不安や恐怖に襲われるなら:不安症群(不安障害)

  • パニック症(パニック障害)
    • 症状: 突然、動悸、息苦しさ、めまい、吐き気などの身体症状を伴う強い**「パニック発作」に襲われます。「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖を感じ、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになる「広場恐怖」**を伴うこともあります。
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  • 社交不安症(社交不安障害、SAD)
    • 症状: 他人の注目を浴びる状況や人前での行動に対し、強い不安や恐怖を感じ、それを避けてしまいます。**「対人恐怖症」「あがり症」**と呼ばれることもあります。
  • 全般性不安症(全般性不安障害、GAD)
    • 症状: 特定の対象ではなく、日常生活のあらゆることに対し、常に漠然とした強い不安や心配が続く状態です。
  • 強迫症(強迫性障害、OCD)
    • 症状: 自分の意思に反して、不合理な考え(強迫観念:例「手が汚い」)が頭に浮かび、それを打ち消すために特定の行動(強迫行為:例「何度も手を洗う」)を繰り返してしまいます。不潔恐怖確認行為などが代表的です。
  • PTSD(心的外傷後ストレス障害)
    • 症状: 生命に関わるような恐ろしい体験(トラウマ)の後、その体験がフラッシュバックしたり、悪夢を見たり、感情が麻痺したり、過度に警戒するなどの症状が続く状態です。
  • 特定の恐怖症
    • 症状: 高所、閉所、特定の動物など、特定の対象や状況に対して強い恐怖を感じ、避けてしまいます。

現実とのつながりに変化があるなら:統合失調症

  • 症状: 思考や感情、行動がまとまりにくくなり、現実との間にズレが生じます。「幻聴」や「妄想」(陽性症状)が現れたり、意欲の低下や感情の鈍麻(陰性症状)、集中力や記憶力の低下(認知機能障害)が見られることもあります。

生まれつき脳の特性があるなら:発達障害

  • ADHD(注意欠如・多動症)
    • 症状: 不注意(集中力が続かない)、多動性(じっとしていられない)、衝動性(思いつきで行動する)が特徴です。子どもだけでなく大人になってから診断されるケースも増えています。
  • ASD(自閉スペクトラム症)
    • 症状: コミュニケーションや対人関係の困難、特定の物事への強いこだわりや反復行動などが特徴です。**「アスペルガー症候群」**もこの中に含まれます。
  • LD(限局性学習症、学習障害)
    • 症状: 知的な発達に遅れがないにも関わらず、読む、書く、計算するなど特定の学習能力に著しい困難がある状態です。

食に関する不調があるなら:摂食障害

  • 拒食症(神経性やせ症)
    • 症状: 極端な食事制限により体重が著しく減少しても、痩せ願望が強く、食べることへの恐怖を感じる状態です。
  • 過食症(神経性過食症)
    • 症状: 短時間に大量の食べ物を食べてしまう**「むちゃ食い」**を繰り返し、その後、体重増加を防ぐために嘔吐や下剤乱用などの代償行為を行う状態です。
  • むちゃ食い障害
    • 症状: 過食を繰り返すものの、嘔吐などの代償行為を伴わないのが特徴です。

眠りに関する不調があるなら:睡眠障害

  • 不眠症: 寝つきが悪い(入眠困難)、夜中に何度も目が覚める(中途覚醒)、朝早く目が覚める(早朝覚醒)などの症状が続き、日中の生活に支障が出る状態です。
  • 過眠症: 日中に強い眠気に襲われたり、夜に十分な睡眠をとっても眠気が解消されない状態です。ナルコレプシーなどが含まれます。
  • 睡眠時無呼吸症候群: 睡眠中に呼吸が止まる・弱くなることを繰り返すことで、睡眠の質が低下する状態です。

特定の物質や行為がやめられないなら:依存症

  • アルコール依存症: お酒の量や飲み方をコントロールできなくなり、精神的・身体的・社会的な問題が生じる状態です。
  • 薬物依存症: 覚醒剤や向精神薬などの薬物を乱用することで、心身に深刻な影響が出る状態です。
  • ギャンブル依存症: ギャンブルをしたいという欲求を抑えられず、日常生活に支障をきたす状態です。
  • インターネット依存症: インターネットやゲームの使用が止められなくなり、学業や仕事、人間関係に悪影響が出る状態です。

人との関わり方に偏りがあるなら:パーソナリティ障害

  • 境界性パーソナリティ障害(BPD): 対人関係の不安定さ、感情の激しい波、衝動的な行動、自傷行為などが特徴です。
  • 回避性パーソナリティ障害: 人との交流を避け、自信がなく、批判されることを恐れるため、社会的な場面で極度の不安を感じます。

その他にも

  • 認知症: 脳の病気により、記憶力や判断力などが低下し、日常生活に支障をきたす状態です。高齢者に多いですが、若年性認知症のように比較的若い年代で発症することもあります。
  • てんかん: 脳の神経細胞の異常な活動によって、けいれんや意識障害などの発作を繰り返す病気です。
  • 身体表現性障害: 身体的な症状(痛み、しびれ、麻痺など)があるにも関わらず、身体的な病気では説明できない状態です。ストレスが関係していることが多いとされます。

3. 「もしかして?」と感じたら、まずは相談を

ここに挙げた症状に心当たりがあっても、自己判断は禁物です。大切なのは、**「心の不調かな?」**と感じたら、早めに専門家へ相談することです。

どこに相談すればいいか迷ったら、まず以下の選択肢を検討してみてください。

  • 心療内科、精神科: 専門的な診断と治療を受けられます。必要に応じて薬物療法や精神療法が行われます。
  • カウンセリング: 精神科医や臨床心理士などの専門家が、対話を通じて心の状態を整理し、問題解決や自己理解を深めるサポートを行います。

4. あなたの心をサポートする「カウンセリング」という選択肢

「心の不調を感じるけれど、病院に行くのは少し抵抗がある…」「薬に頼らず、まずは話を聞いてもらいたい」。そう考える方にとって、カウンセリングは非常に有効な選択肢です。

カウンセリングは、精神科での薬物療法とは異なり、対話を通して心の状態を整えていくアプローチです。専門のカウンセラーが、あなたの話に耳を傾け、心の重荷を軽くし、問題解決や自己理解を深めるお手伝いをします。

カウンセリングが心の健康にもたらすこと

カウンセリングには、あなたの心と向き合うための多くのメリットがあります。

  • 安心できる安全な場所: 守秘義務のある専門家が、あなたのどんな話も、どんな感情も、批判することなく受け止めます。誰にも話せなかったこと、言葉にできなかった思いを安心して話せる場所です。
  • 自分の気持ちの整理: 漠然とした不安や、混乱した気持ちを言葉にすることで、感情や思考が整理され、何が問題なのかが明確になります。
  • 問題解決へのアプローチ: カウンセラーは、あなたの話の中から問題の根源を見つけ出し、新しい視点や対処法を一緒に探してくれます。あなた自身が解決策を見つける手助けをしてくれるのです。
  • ストレスへの対処法を学ぶ: ストレスの原因やパターンを理解し、あなたに合ったストレス対処法やリラクゼーション法などを身につけることができます。
  • 自己理解の深化: 自分の性格、行動パターン、価値観などを深く理解し、より自分らしく、しなやかに生きるためのヒントを得られます。

精神疾患の経験を持つカウンセラーという選択肢

カウンセラーの中には、自らも精神疾患を経験し、それを乗り越えてきた方がいます。彼らは、専門的な知識や技術に加え、「当事者」としての視点を持っています。

  • 共感と理解: 実際に同じような苦しみを経験しているからこそ、あなたの言葉の裏にある本当の気持ちや、病気ならではのつらさを深く理解し、共感することができます。
  • 体験に基づくアドバイス: 自身の経験から得た具体的な対処法や、回復への道のりのヒントを共有してくれることがあります。
  • 希望を与えてくれる存在: 「この人も乗り越えられたのだから、自分もきっと…」という希望や勇気を与えてくれる存在となるでしょう。

もちろん、カウンセラーの専門性や資格が最も重要であることは変わりません。しかし、もしあなたが「自分の気持ちを本当に理解してくれる人に話したい」と感じるなら、精神疾患の経験を持つカウンセラーを探してみるのも一つの選択肢です。