症状別の困りごととカウンセリングでできること

「激しい気分の波に振り回される」「躁状態の時の行動を後悔する」「うつ状態が辛くて何もできない」。双極性障害は、躁状態と抑うつ状態という両極端な気分の波が特徴の疾患であり、その症状は日常生活に大きな影響を及ぼします。

この記事では、双極性障害の代表的な症状別に、カウンセリングがどのように役立つかを詳しく解説します。あなたの「困りごと」に寄り添い、安定した日常を築くためのヒントを見つけていきましょう。

1. 躁状態・軽躁状態の困りごととカウンセリング

【代表的な症状の困りごと】

  • 衝動的な行動: 大金を浪費してしまう、無謀な投資をする、無計画に転職を決めるなど、後で後悔する行動が多い。
  • 人間関係のトラブル: 攻撃的になる、批判的になる、多弁になりすぎて相手を疲れさせるなど、周囲との関係が悪化する。
  • 睡眠不足: ほとんど眠らなくても平気になり、体が休まらない。
  • 誇大妄想: 自分は何でもできると思い込み、非現実的な計画を立ててしまう。

【カウンセリングでできること】 躁状態や軽躁状態のピーク時は、ご本人が困りごとを自覚しにくいため、カウンセリングが難しい場合があります。しかし、落ち着いた時期や、ご自身で「これはおかしい」と感じ始めた時にカウンセリングを利用することで、以下のサポートが可能です。

  • 早期発見のサインを学ぶ: 自分の躁状態軽躁状態に移行する際のサイン(例:睡眠時間の短縮、焦燥感、多弁になるなど)を特定し、そのサインが出たときの対処法を学ぶことで、悪化する前に対応できるようになります。これは再発予防にもつながります。
  • 行動コントロールの練習: 衝動的な行動パターンを振り返り、リスクの高い行動を避けるための具体的な戦略を立てます。例えば、高額な買い物をする前にワンクッション置く、友人や家族に相談するといった方法を検討します。
  • 思考の整理: 誇大的な思考や非現実的な計画が浮かんだ際に、それを客観的に捉え、現実とのズレを認識する練習をします。
  • 周囲との連携: 家族など、周囲の協力を得て、適切なタイミングで医療機関を受診する、行動をセーブするなどのサポート体制を築く話し合いをカウンセラーを交えて行うこともできます。

2. 抑うつ状態の困りごととカウンセリング

【代表的な症状の困りごと】

  • 強い気分の落ち込み: 朝起きられない、何もする気が起きない、絶望感に襲われる。
  • 興味や喜びの喪失: 以前好きだったことにも関心がなくなり、楽しいと感じられない。
  • 思考力・集中力の低下: 仕事や勉強が手につかない、物事を考えるのが辛い。
  • 睡眠障害・食欲不振: 不眠が続く、食欲がわかない、あるいは過食になる。
  • 自己肯定感の低下: 自分を責めてしまい、「自分は価値がない」と感じる。

【カウンセリングでできること】 双極性障害の抑うつ状態は、うつ病の症状と似ていますが、治療アプローチが異なる場合があります。カウンセリングは、この辛い時期を乗り越え、回復を促すために非常に有効です。

  • 感情の受容と整理: 辛い感情を安全な場で吐き出し、カウンセラーが共感的に受け止めることで、心の重荷を軽減します。混乱した感情を整理し、客観的に見つめ直すお手伝いをします。
  • 活動性の回復支援: 抑うつ状態では活動量が低下しがちです。無理のない範囲で少しずつ活動量を増やしていく行動活性化の手法を取り入れ、達成感を積み重ねるサポートをします。
  • ネガティブな思考の修正: 「自分はダメだ」「どうせうまくいかない」といった抑うつ状態に特有のネガティブな思考パターンに気づき、より現実的でバランスの取れた考え方に変えていく練習をします(認知行動療法)。
  • 睡眠・生活リズムの改善: 安定した気分のために非常に重要な睡眠生活リズムの乱れを整えるためのアドバイスやサポートを行います。

3. 気分の波そのもの・日常生活の困りごととカウンセリング

【代表的な症状の困りごと】

  • 予測不能な気分の変動: 自分でもなぜ気分が変わるのか分からず、周囲も戸惑う。
  • 仕事や学業の継続困難: 躁状態と抑うつ状態の繰り返しで、安定したパフォーマンスが維持できない。
  • 人間関係の悪化: 気分の波で周囲に迷惑をかけてしまい、孤立感を深める。
  • 疾患の受容とつきあい方: 病気であることを受け入れられない、一生付き合っていくことに不安を感じる。

【カウンセリングでできること】 双極性障害と共に生きる上で、気分の波そのものや日常生活への影響に対するカウンセリングは不可欠です。

  • 心理教育双極性障害という病気について深く理解することで、症状に対する不安が軽減され、疾患受容が進みます。薬物療法の重要性や、服薬継続のメリットについても学びます。
  • ストレスマネジメント: 気分の波の引き金となるストレスを特定し、効果的な対処法を身につけます。
  • 家族・周囲への心理教育と連携: 家族への心理教育を通じて、病気への理解を深めてもらい、サポート体制を構築するお手伝いをします。家族関係の改善にもつながります。
  • 再発予防計画の策定: 症状が安定した時期に、今後の再発予防のための具体的な計画(トリガーの特定、早期サインへの対応、緊急時の連絡先など)を一緒に立てていきます。
  • 生活リズムの安定化: 規則正しい睡眠、食事、活動が気分の安定に不可欠であることを理解し、それを実践するためのサポートを行います。

まとめ:双極性障害と向き合うあなたをカウンセリングは支える

双極性障害は、症状が多様で複雑な疾患ですが、適切なカウンセリングを受けることで、ご自身の症状を理解し、気分の波を乗りこなす力を養うことができます。

カウンセリングは、辛い抑うつ状態からの回復を促し、躁状態の衝動的な行動を防ぎ、そして何よりも再発を予防し、安定した日常生活を送るための重要なサポートとなります。一人で抱え込まず、専門家であるカウンセラーと共に、より穏やかな未来を築いていきませんか。